北川景子、“静”の芝居で開花 清張作品で新たな一面

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女優の北川景子が、3月13日(日)放送のドラマスペシャル『黒い樹海』(テレビ朝日系列、21時~ ※一部地域を除く)で、松本清張作品に初挑戦する。

今作は、時代を超えて読み継がれる国民的作家・松本清張の1960年に刊行された長編小説『黒い樹海』をドラマ化したもので、過去には、映画を含め5回に渡って映像化されており、テレビドラマはいずれも高視聴率を記録。今回、北川を主演に迎え、サスペンスフルな原作の魅力はそのままに、設定を現代に置き換え、よりスリリングなストーリーに脚色されている。過去には、映画を含め5回に渡って映像化されており、テレビドラマはいずれも高視聴率を記録。今回、北川を主演に迎え、サスペンスフルな原作の魅力はそのままに、設定を現代に置き換え、よりスリリングなストーリーに脚色されている。

北川が演じるのは、たったひとりの身内である姉・笠原信子(小池栄子)を不慮の事故で亡くした妹・笠原祥子。姉の死の真相を求めて孤独な調査を開始する姿が描かれていく。共演の、向井理、沢村一樹ら豪華キャストと重厚な旅情ミステリーに挑む。

この撮影は、東京都内のほか、長野県大町市などでも行われており、クランクアップした直後の北川さんをインタビュー。その模様を前編・後編の2回にわたり紹介します。前編では、清張作品の魅力についてや、長野ロケでの裏話など存分に語っていただきました。

<前編>

――脚本を最初に読んだ時の印象は?

“松本清張”に対するイメージというのが、いい意味で壊れた気がしました。たまたま私が見ていた清張作品がそうだったのかもしれませんが、これまでは、大人の男性が主演で、男女関係のもつれなどが描かれている印象でした。でも、今回は若い女性が主役で、まず、そこが新鮮でした。また、“過去と現在”が交錯した展開でみせていくので、新しさを感じました。原作自体は、私が生まれる前に出版されていますが、上手に現代の設定に変換されていて、そこも魅力的でした。

――例えば、どんな違いがありましたか?

原作は、携帯電話や電子マネーみたいなものが存在しない時代なので、そういったところのアレンジや、トリック自体もすごく良くできていました。単純に読み物として引き込まれてしまい、あっという間に読んでしまったのを覚えています。ただ、自分がこれから演じるんだという目線で読んでいましたので、“どういうふうに演じれば……”というプレッシャーはありましたね。

――祥子というキャラクターをどのように形成していかれましたか?

最初に台本を読んだ時、祥子というキャラクターのヒントになるものが、すごく少ないという印象でしたが、姉との楽しい買い物や食事のシーンから、姉のことが大好きで本当に慕っていたんだろうな、というのは感じました。ほかには、物語の途中で「ちょっとしたことに我慢が出来ないんです」というセリフがあり、そういう性格なのかなと思って台本を読み進めていきました。それ以外、あまりヒントになるものが書かれてなくて……。その後、姉が亡くなってしまうので、基本ずっと「沈んだ感じ」とト書きにあり、正直どういうふうに作っていけばいいのか悩みました。衣裳合わせでも、祥子の服装は、地味過ぎでもなく、派手すぎでもない、ごくごく普通の一般的な女の子という感じでしたので、撮影をしながら作っていきました。

――その中でもヒントになったのは?

小池さんが“しっかりした頼れる姉”という感じでやってくださっていましたので、自然と対照的な“甘えん坊な感じの妹”が出来ていきました。これだけ姉のことが好きだったがゆえに、亡くなってしまったことで相当打ちひしがれたんだろうな、というコントラストに重きを置けたので、良かったかなと思います。

――これまで演じられた役とは違ったテイストの役ですね

そうかもしれません。これまで、怒鳴るとか、睨むとか、結構派手な役が多かったのですが、今回はキャラの濃い役ではないので、細かいお芝居がすごく必要だなと思いました。ただ笑ったり睨んだりしなくても、悲しんでいるのか、考え込んでいるだけなのか、思い出そうとしているのか、どうしてこの人はこういう顔をしているのか等を伝えなくてはならず、お芝居の難しさというのを感じました。よく役者さんが、お芝居を“静”と“動”で表したりしていますが、今回はその難しさを感じました。

――祥子に共感されたところは?

姉妹が亡くなってしまうということ自体、すぐ割り切れることではないですし、私も、なぜ亡くなったのかを考えると思うんですが、今回のお話では、姉の死の謎を追うごとに、“姉には自分の知らない面があった”ということがどんどん明かされていきます……。そこが祥子を突き動かしていたのではないでしょうか。実は、最初は共感できなかったところもありました。私だったら知るのが怖いし、これ以上、自分が知る姉妹とは違う一面、知らなくてもいいことを知ってしまうかも……思うと、彼女のように行動できるのかなと思いますね。なので、祥子は勇気があるし探求心がすごいなと思いました。

――北川さんご自身、他の人の別の顔は知ろうとしないタイプ?

例えば、この人のことは一番私がわかっているっというつもりだとして、もし別の顔があったらどうしようかな(笑)。知らなくていいこともあるのかな、と思っちゃいますよね……。でも、今回感じたのは、祥子の姉は、その一面を隠すつもりや、人によって変えるつもりというのは、多分なかったんだろうなと。自然にそうだったのではないかと思います。みんなそうだと思いますが、人によって全然見せる顔が違いますよね。私の演じる祥子も姉の前と、吉井(向井)の前で見せる顔は違いますし、そういう意味で、みんないろんな所で自分の所属する場所があり、その場所毎にみんな生きるために適応している。ですから、知らない顔があって当然ですし、それを知らなかったからといって「なぜ教えてくれなかったんだろう」「悲しい」とか、そういうふうに思わなくていいんだなと思いました。

――祥子を通じて見えた“お姉さん”の存在

姉が、凄くちゃんとした人で強い人だったからこそ、亡くなったあとにいろいろ調べても、「こういうことだったんだ」と理解することができたと思います。もし、姉がでたらめでしたら、調べれば調べるほどカオスだったと思うんですが、実際、姉がどんな生き方をしたのか、そして祥子には、それがどのように映るのか、ぜひご覧いただければと思います。

後編へつづく>>

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