『フォーミュラE』片山右京が初戦の感想と次戦への展望を語る

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F1と同じFIA(国際自動車連盟)管轄による、電気自動車によるフォーミュラカーレース『FIAフォーミュラE選手権』が、10月24日に中国・北京で「第2幕」がスタートを切った。

今年から各チーム、ワンメイク(全チーム同じ車)ではなくなり、パワートレイン(ギアボックス、モーターなど)が自由化。更に、予選のレギュレーション、ファンブーストの締め切り時間、使えるタイミングなども去年とは異なるといったの大きな変化があった。

今シーズンを占う上で大きな意味を持つ開幕戦だが、予選から圧倒的な速さを見せたルノーe.ダムスがフロントロウを独占。決勝レースも安定した走りでセバスチャン・ブエミ
(ルノーe.ダムス)が見事ポールトゥウィンを飾り、レースで獲得できる最大ポイントである30ポイントをフォーミュラE史上初めて獲得する幕開けとなった。

開幕戦の中国大会後、今年も解説を務める元F1ドライバー片山右京氏が今シーズン初戦を終えての感想と次戦への展望を語った。

――いよいよ開幕しましたが、開幕戦はいかがでしたか?

ファーストシーズンが劇的な展開で、フォーミュラEや電気自動車といったものの概念を変えてくれるものでした。そのセカンドシーズンということで未来に向かって違う一歩を踏み出すシーズンになるだろうと思っていました。例えば、ギアボックス、モーターの開発でバッテリーをどれほど効率的に使うことができるのか、その変化が注目点でした。

オフシーズンのドニントン・パークでのテストではメーカーのサポートが強いチームのタイムの良さが目立ち、開幕戦も基本的にはそうなりましたが、別の見方もできて、ギアボックスやモーターにしても何通りもの組み合わせがあって、どれが一番いいのかはまだ完璧には証明できていないんですよね。大雑把な言い方をしてしまえば、開幕までの準備期間でルノーe.ダムスが完璧だっただけで、ヴェンチュリーにしても技術的にもノウハウは持っているはずだし、セットアップがうまくかみ合えば結果に結びついたと思います。表彰台争いをしていたドラゴンレーシングはパワートレインをヴェンチュリーと同じものを使っていてオリジナルなものはありません。そういった意味では今はドライバーのおかげという部分もありますよね。このままレースをやっていくとかなりがんばっていかないとそこから明暗が分かれていくと思います。ただ、開幕戦を終えてルノーを目標にという一つの物差しというか基軸ができましたのでそこをターゲットに次戦からも楽しみですね。

――開幕戦を迎えるにあたって残念だったのがトゥルーリの不参加ですよね?

そうですね。アンドレッティのように去年のパワートレインでと申請してしまえば開幕戦を走れたはずですが、一度そのように申請してしまえば変えることはできないのでここまでの開発を棒に振るわけにはいかないですよね。そういった判断が正しかったかどうかは今はまだ言えないですが、次戦のプトラジャヤまで時間がないのでトゥルーリのやらなければいけないことのハードルは高いですけど、他のテクノロジーを見たら本当にポテンシャルはあると思いますし、それは他の開発途中のパートナーを持っているチーム、例えばネクストEV TCRなどにも皆おんなじことが言えると思うんですよね。去年と同じマシンで参加していると安定はしているけれども、そこから先の進歩は見えないことも分かっているので、開幕だけじゃ占えない部分が大きいですね。

――セカンドシーズンから採用の“スーパー・ポール”、ご覧になっていかがでしたか?

エンターテインメント性は高いと思います。でも、乗る方の気持ちになって考えるとフォーミュラEカーを操るという特殊な環境の中でのワンアタック=ワンチャンスというもので、いかにミスをしないかということの難しさを感じますね。ポールポジションを獲れれば、3ポイント獲得できるという重みも出てきますし、予選一回で「はい、終わり」ではないので見る方は面白いですけど、やる方は大変ですよね。そんな中でプレッシャーとかそういう中でミスをしなかった、逆にタイムを削ってきたブエミは褒めてあげるべきでしょうね。こんな言い方しちゃ失礼だけど、ブエミがあんなに素晴らしいドライバーだったとはね(笑)。

【※スーパー・ポール・セッションとは?】
・抽選で5台×4組に分け(変更なし)、各組の持ち時間は6分に短縮される(事実上タイムアタックのチャンスは1周のみとなる)。
・成績上位5台は、15分間の「スーパー・ポール」セッションに勝ち進む(6位以下はそのまま暫定順位確定)。
・スーパー・ポール・セッションでは、まず5位の車がピットアウトし、これがタイムアタックに入ったら4位の車がピットアウト、以下同様に続ける。
・スーパー・ポール・セッションでのタイムで上位5台の暫定順位を決め直す。

――結果、北京ではルノーがフォーミュラEで初めてフロントロウを独占するという形になりましたが、ご覧になっていてどんな印象でしたか?

ドライバーのメンタルだけでいうとウォームアップじゃないですけども、タイヤ&ブレーキをしっかり温めて、コースをしっかりチェックして、とプレッシャーに強いだけじゃなくて、ちゃんと準備をするとタイムが出るマシンもあるということだと思うんですよね。もちろんレースになるとルノーを中心に展開するでしょうけども、バトルが激しくなれば順位も変わるし、アクシデントがあれば結果をそろえるのが難しいと思うので、ルノーが強いのは百も承知でわかりましたが、レースってそんなに甘くないっていうこともありますから。チームの関係者も勝ったからと言って、枕を高くして寝られることはないでしょうね。

――ブエミがポールポジションとファステストラップもとり、さらに優勝ということで、個人で取れる最多の30ポイントとりましたね?

昨シーズン1ポイント差で初代チャンピオンを逃したブエミからすれば、これ以上ないスタートで彼のオフシーズンのセカンドシーズンにかける意気込みとか思いがここに表れ
たんじゃないでしょうか。ちょっと心配なのがブエミが車がいいとか、今年はいけそうだなと油断したりすると足元をすくわれたりすることがあるので、彼は人間性もいいと思うので「勝って兜の緒を締めよ」でいかないといけないと思いますね。

――開幕戦でチームを移ってきたニック・ハイドフェルドが表彰台に立ちました。ドライバーの腕を見せてくれた気がするのですがいかがでしょう?

ヒューマンスポーツというかモータースポーツの原点みたいなハードやソフト面だけでない部分での「やる気」がチーム初の表彰台をもたらしたと思います。ニックは改めていいドライバーだなーと、本当にいい意味での「職人」だと思います。やはりモータースポーツはマシンも大事だけど、ドライバーなんだ!というところも、魅せてくれたレースでしたよね。

――各ポジションでの順位争い、激しいバトルでもありました。セカンドシーズンも楽しめそうだなという印象でしたがいかがですか?

ルノーのブエミがぶっちぎってという見え方でしたが、まだまだ後ろの方では接近戦もあり、アクシデントがあってエネルギーをセーブできたところでバトルが激しくなるのは変わらないので、フォーミュラEの面白さはセカンドシーズンでレギュレーションが変わってもそこが変わらないことがよかったですよね。

――マレーシア・プトラジャヤでの第2戦で期待されるところはどこですか?

北京からコースがガラッと変わって、コース幅が狭いんですよね。ですから北京みたいにワイドでブレーキングでインに飛び込んでというのは難しくなります。ただ長い直線がしっかりありますので、オーバーテイクポイントがあるという部分とタイトなコーナーと中速とスローコーナーを使ってレーシングラインを上手にコントロールすることによって、相手のノーズを抑えてスピードコントロールすると後ろの人たちにチャンスが出たりその分バトルが激しくなるんですよね。終盤までバトルが続くので目が離せないですね。

【放送詳細】

・11月7日(土)
「フリー走行」9:00~(CSテレ朝チャンネル2)
「予選」10:50~(CSテレ朝チャンネル2)
「決勝」14:50~(CSテレ朝チャンネル2)

・11月10日(火)
「大会ハイライト」23:00~(BS朝日)

・11月15日(日)
「大会ハイライト」 27:15~(地上波テレビ朝日)

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