ジャーナリスト室井昌也、プレミア12“開幕戦”は「投手戦なら日本に勝機あり!」

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野球世界一決定戦『世界野球プレミア 12』が、11月8日(日)の「日本vs韓国戦」で開幕。これまで幾多の白熱戦を繰り広げてきた宿敵・韓国との戦いだが、トップチーム同士の対戦は、2009年のWBC決勝以来6年ぶりとなる。

この開幕戦を前に、韓国野球を取材し、「今の韓国プロ野球事情」について詳しいジャーナリストの室井昌也氏に、韓国についてやプレミア12の開幕戦の見どころなどについて話を聞いた。

――開幕戦。ズバリ、日本の投手陣と対戦してどういう展開を予想しますか?

韓国代表のキム・インシク監督は「日本のピッチャーは低めに投げ切る制球力が優れているのでそう点は取れないだろう」とし、「手堅くランナーを進めて……という戦術よりも、限られたチャンスでランナーが自分の判断で盗塁するなど、一気に攻めていくしかないのでは」と話していました。

韓国打線で主軸を打つのは、日本シリーズでもMVPと大活躍をしたイ・デホ(33歳=ソフトバンク)と、今回放送するオールスター戦には出場していませんが、パク・ピョンホ(29歳=ネクセン)が4、5番を担います。パク・ピョンホは、2012年から今季まで4年連続本塁打王と打点王の2冠を獲得。スコアボードの上を超えていく本塁打がとても印象に残るバッターです。力強いアッパースイングで韓国初の2年連続50本塁打を達成していて、韓国最強打者と言えるかもしれません。過去には20盗塁を記録するなど、走塁技術もあります。長距離砲でありながら広角に打ち分けるテクニックがあり、打率も残しています。しかし、スイングが大きいので三振が多いのも特徴です。

そのパク・ピョンホの前を打つのが、キム・ヒョンス(27歳=トゥサン)です。パク・ピョンホとキム・ヒョンスはともに今オフにメジャーリーグ進出を目指しています。キム・ヒョンスはミートが上手く、2ストライクを取られても、どんなコースでも態勢を崩されずにヒットを打てる対応力があります。左打ちですが、左投手を苦にしないタイプです。本人に「日本の選手では誰とタイプが似ていると思うか?」と尋ねると「左右の違いはあるが、内川(聖一=ソフトバンク)選手」と答えました。体格が良く、見た目は長距離打者ですが、確実性の高いアベレージヒッターです。

――室井さんが選ぶキーになっていく打者は誰だと思いますか?

パク・ソクミン(30歳=サムスン)です。天才肌で予想外のプレーを見せる打者であり、三塁手としてはライン際の難しい打球をさばく技術もあります。パク・ピョンホのような主軸は、日本ベンチに研究されて実力がなかなか発揮できないことが予想される中、こういった選手が「ダークホース」的に、面白い存在になるかもしれません。

また、三拍子揃った「韓国の柳田」ともいえるナ・ソンボム(26歳=NC)が下位に控えるなど人材豊富です。ナ・ソンボムは今季、打率.326、28本塁打、23盗塁、135打点という「トリプルスリー」を狙える成績を残しています。

さらに、オールスター戦の「ホームランレース」で快打を連発していたファン・ジェギュン(28歳=ロッテ)が、代表では下位打線または控えにまわる可能性もあり、韓国打線はタレント揃いです。

――韓国の投打成績を見ると、完全に「打高投低」ですが、投手陣の仕上がり状態は?

投手陣に関しては、非常に心配です。人材不足は否めません。

エースの左腕キム・グァンヒョン(27歳=SK)は、2008年の北京五輪で日本戦に2度先発し、好投しているので、名前を覚えている日本のファンも多いことでしょう。今季も14勝6敗で3年連続2ケタ勝利をマークしています。

これまでの日本戦ではキム・グァンヒョンの他に、シドニー五輪のク・デソン(のちにオリックス)、2009年WBCのポン・ジュングン(LG)らの左腕投手が日本打線の前に立ちはだかってきました。その流れを受けて、個人的に最も注目しているのは、チャ・ウチャン(28歳=サムスン)です。140キロ後半のストレートにカーブ、スライダー、シーズン後半からスプリットを増やして、リーグトップの194奪三振で、奪三振王のタイトルを獲ったサウスポーです。もしかしたら、今回の日本戦の先発やロングリリーフとして国際大会の一発勝負でハマる可能性もあります。

また、投手コーチは、中日でもプレーしたソン・ドンヨル(元中日)さんです。日本プロ野球を熟知しているので、特性を重視した起用法をしていくでしょう。ソン投手コーチのやりくりもとても重要になってくると思います。

――日本選手で韓国国内の知名度が高いのは誰ですか?

大谷翔平、中田翔(いずれも日本ハム)ですかね。大谷の場合は、「二刀流&160キロ」というキーワードのインパクトが強いので、日本のメディアが伝えたものが、そのまま韓国でも伝えられています。韓国代表内でも「大谷は年齢も若く、そのポテンシャルはハンパない!」という言葉が聞かれます。

また、韓国のケーブル局ではソフトバンク戦の中継が、放送されているということもあり、キム・インシク代表監督は、「日本の印象的な打者」の一人として、真っ先に松田宣浩(ソフトバンク)の名前を挙げました。

――開幕戦が行われる札幌ドーム、韓国選手は慣れているのか?

韓国の選手たちは過去のアジアシリーズやWBCで来日した際、ドーム球場について「韓国と違って派手な広告などが少なく、落ち着いた雰囲気なので、バッターボックスではものすごく集中しやすい。照明も明るく、やり易い」と話していました(これまで韓国にはドーム球場はなく、今秋、国内初のドーム球場が完成)。

――最後にプレミア12「日本vs韓国」開幕戦の見どころは?

今年、投手三冠(防御率、勝ち数、勝率)を獲得し、韓国代表選手たち誰もがその実力を評価する大谷の160キロと、韓国の50発男、パク・ピョンホの「力と力」の激突が注目だと思います。「打ち合いなら韓国に分がありますが、投手戦なら日本に勝機あり!」と思います。

また、前日の7日には、「開幕直前SP」として『韓国プロ野球オールスターゲーム』(4:45~8:15)がCSテレ朝チャンネル2で放送される。