劇場アニメ『打ち上げ花火~』をどうやって観るか?4つの映像で深掘り

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ある日、YouTubeを流し見していたところ、ピアノの旋律と共に、女性の透き通るような歌声と男性の歌声のハーモニーが聞こえてきた。気になって画面に目をやると、そこに映し出されていたのは、可憐な少女と素朴な少年が登場するアニメ映像だった。

大きなバッグを持って走ってくる浴衣の少女、ホースで水を掛ける少女、そして、打ち上げ花火……。昔、フジテレビで放送された岩井俊二監督のドラマ『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(1993年放送、1995年には一部編集され劇場公開)を、おぼろげながらも思い出す。

そして映像のラストに“DAOKO×米津玄師『打上花火』”と映し出されると、これが数日後に公開される劇場アニメーション『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の主題歌だと判明。劇場へ足を運ぶことを決意する(ちなみに作品タイトルは冒頭にも登場していたが、初回視聴時はその画面を見ていなかった)。

前置きが長くなったが、今回、“岩井監督作品のど真ん中世代”となる30代中盤の筆者が劇場に足を運ぶまでに観た4つの映像を、筆者の思いと共に紹介。これらを観れば、24年間の時を超えて再び描かれる『打ち上げ花火~』を、より深く楽しんでいただけるはずだ。

まず観ていただきたいのは、もちろん原作。放送当時、登場人物たちと同年代だった筆者にとって、原作はとても印象深い作品で、先のMVを観ていても「奥菜恵がめちゃくちゃ可愛い」「何か色っぽいな」と小学生ながらに感じていた当時の記憶が蘇った。ノスタルジックな感傷に浸った筆者は、居ても立っても居られず映像をインターネットで探し始め、程なくして配信しているサイトを発見した。

早速視聴すると、1993年当時、アナログ放送用に作られた4:3の映像が映し出され、1人の少女と2人の少年が巡る“もしも”の1日が展開される。当時14歳だった奥菜恵は、ちょっと大人びた神秘的な役どころで、夜のプールで月明かりに照らされる彼女の姿に、当時、恋い焦がれたことを更に強く思い出すのだった……。

そして、公開される劇場版アニメも気になった筆者は、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』のWikipediaを閲覧。ドラマ『打ち上げ花火~』が、フジテレビで放送されたテレビドラマシリーズ『If もしも』の一つの企画として制作されたことや、当時話題になった劇中歌「Forever Friends」をDAOKOが今回のアニメ版のためにカヴァーし、そのミュージックビデオを岩井監督が手掛け、原作のロケ地で撮影されたことを知る。

岩井監督が手掛けている関連作品があるという思わぬ発見にテンションの上がった筆者は再びYouTubeへと移り、DAOKOの「Forever Friends」のMVを視聴。時代が変わり、16:9の画角で撮影された映像の中に、青い衣装と傘を持ったDAOKOが登場し、見覚えのある学校やプール、灯台など、岩井監督ならではの映像が映し出された。

さらに、アニメの脚本を、テレビ東京で放送された連続ドラマ『モテキ』の大根仁監督が手掛けていることを知り再び興奮。『モテキ』の第2話は、原作『打上花火~』がモチーフになっており、満島ひかり演じるヒロイン・中柴いつかが、森山未來演じる主人公・藤本幸世と一緒に原作のロケ地となった千葉県海上郡飯岡町(現在の旭市)を訪れ、そこで2人の恋愛模様が描かれる。その回の映像は、原作を完コピしたアングルのカットがたっぷりと使われた“神回”として、原作ファンの間でも大きな話題となった。そんな大根監督が手掛けていると知り、今回のアニメに対して俄然期待が上がっていく。もちろん『モテキ』を久しぶりに観たのは言うまでもない。

これらの映像を観て心の準備が整ったところで、いざ公開された作品を観に劇場へ。尚、これらを見てもネタバレについては心配ない。アニメ版もテーマや登場人物は同じだが、中盤からラストにかけては原作とは違う物語が展開され、もう1つの「if」が描かれていた。冒頭の主題歌MVと合わせ、今回紹介した4作品をチェックして『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の世界観に浸っていただきたい。

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