大流行「クラフトビール」の代名詞「よなよなエール」美味しさの秘密とヒットの理由

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毎回、素敵な大人になるために「おとななら○○しよう」とテーマを掲げ、様々な事柄を掘り下げて紹介する知的好奇心バラエティ『~オトナ度ちょい増しTV~おとな会』(MBS、毎週水曜24:59~)。22日の放送では、「おとなならもっとビールを味わおう」と題して、現在ブームになっている「クラフトビール」を取り上げた。

「クラフトビール」とは、小規模な醸造所でビール職人が丹精込めて造り出す、まるでクラフト(手工芸品)のように高品質なビールのこと。クラフトマンシップ(職人芸)に由来した名称で、「地ビール」と言われることもある。番組では今回、クラフトビールの代表格「よなよなエール」を生み出した会社「ヤッホーブルーイング」にスポットを当てた。

日本人にとって、ビールと言われてまず思い浮かべるのは“のどごし”を重視した国内大手メーカーの主力商品。そのほとんどは、麦汁を低温で発酵させるラガータイプ(ピルスナーも含む)に分類される。対して、麦汁を15~20度で発酵させるのがエールタイプ。泡は少なく、アルコール度数はやや高めのため、のどごしではなく、個性豊かな香りやコクをゆっくり味わうためのビールと言える。

エールビールの専門メーカー・ヤッホーブルーイングは1997年に創業、当初は地ビールブームに乗って好調だったが、流行が過ぎると業績が悪化。2004年頃までには、倒産寸前にまで追い込まれた。しかし、現在は10年連続で増益し、昨年、キリンビールとの業務提携も発表した。

浅間山を望む長野県佐久市に醸造所を構えるヤッホーブルーイング。社名の“ヤッホー”は、軽井沢の山の中から、日本中に“美味しいビールができたよ”と呼びかける、という意味で名付けられたという。醸造所に潜入し明らかになったのは、よなよなエールの美味しさの秘密。ビール作りは、粉砕した麦芽を釜に入れて麦汁を作るところから始まるが、その中にホール・ホップ(ホップの花を乾燥させたもの)を投入する際、香りが出やすいように、手で丁寧にもみほぐしてから入れる。独特のグレープフルーツのような芳香は、ルプリンという香りの成分が入ったカスケード種のホップを使用。さらに、通常は最初だけ入れるホップを、熟成中にも加えて香りを引き立たせている。

ヤッホーブルーイングの先代社長(現在の星野リゾート社長)が、1980年代にアメリカで出会ったペールエールに衝撃を受け、「かつて日本になかった香り豊かなビール」を広めたいと願って誕生した、よなよなエール。香り高くコクのある美味しさが評判だが、近年の大ヒットの要因は、他にもあった。業績が悪化した時、楽天の三木谷浩史社長から、楽天市場に出さないかとの打診があり、インターネット展開に踏み切る。当時、他のクラフトビールは出店しておらず、個性的なネーミングやパッケージの高いデザイン性などのブランディングが成功し、まずはネットで顧客を獲得した。また、自ら「ビール製造サービス業」を名乗り、ファンミーティングを開催するなど顧客を大切にする姿勢を打ち出し、ファンによる“口コミ”を重視。すると、営業活動をせずとも、近所の小売店にも商品を置いて欲しいというファンの要望が高まり、少しずつ取扱店が増え、今では一部のコンビニでも購入できるまでになった。

よなよなエールの他にも様々な人気商品が誕生しているが、実はこの会社、商品開発部と言われる部署がない。社内にアメリカの家庭用ビール作りキットを備えており、「社員全員が開発者」を謳い文句に、製造部門以外の社員も自由にビールを試作し、社長も含めて議論を重ねている。独特なのは、ビールの味だけではなく、その社風。ひいては社員のモチベーションを高め、顧客の熱量を上げ、現在の躍進に繋がっていると言えそうだ。

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