『貴族探偵』スピンオフVR作品を公開!“ドラマ”を意識した演出がキラリ

公開: 更新:

嵐の相葉雅紀主演で、4月17日よりスタートする新ドラマ『貴族探偵』(フジテレビ系列、毎週月曜21:00~)のスピンオフVR作品『カンシキTV』が、フジテレビのVRコンテンツ視聴アプリ「FOD VR」で配信開始。ドラマを意識した“作り”や“演出”がキラリと光る、ユーザーフレンドリーなVR作品となっていた。

まずはドラマ本編を簡単に紹介。麻耶雄嵩による本格推理小説「貴族探偵」と続編の「貴族探偵対女探偵」(いずれも集英社文庫刊)が原作で、相葉演じる本名も出生も不明な“貴族”が、主人公でありながら推理をせずに謎を解いていくという、推理小説の既成概念を打ち砕く前代未聞の物語が繰り広げられる。

公開された『カンシキTV』は、ドラマで田中道子が演じる鑑識員・冬樹和泉が登場する、“鑑識の、鑑識による、鑑識のためのTV”という一風変わった世界観のミニドラマ。ある別荘の地下で、殺人事件の現場となった“鬼隠しの井戸”が舞台で、和泉は、鑑識が現場検証した後の様子や手がかりを紹介し、放送前から事件に対する想像を膨らませることができるといった内容になっている。

このVR映像を視聴したところ、二つのポイントに気が付いた。まず、一つ目は“カメラポジションとカット割り”。現在、VRで公開されているドラマのように芝居を見せる作品は、ある一定の高さ(例えば人の目線)に360度カメラを設置し、役者はカメラの周囲で芝居をしているというものがほとんど。個人的な感想としては、ドラマというよりも、その場をただ見ているだけという感覚のものが多い。しかし、この作品ではカメラの位置を変え、カット編集することで、ダレてしまいがちな360度映像にドラマらしい演出を加え、テンポを生み出していこうという意図が見える。

二つの目のポイントは“迷子の克服”。360度のVR映像は、周囲をすべて映せるのがメリットである反面、ドラマなどのように“見るべきポイント”が明確にある場合、その自由度の高さが仇となり、その対象を見失ってしまうことがよくある。その意味で“視線誘導”が非常に重要で、今回の作品では、唯一の登場人物となる田中演じる和泉がその役割も担っている。

どういうことかというと、この映像で和泉は井戸の周囲を歩きながら現場を紹介していくのだが、彼女を追っていけば基本的に見るべきシーンを見逃すことはなく、迷子にもなりづらい。そして、様々な映像エフェクトも彼女の動作が起点となっているので、スムーズに視線を動かすことができる。また、カット割りも彼女の位置がベースになっており、適切な方向を見続けることができる様になっているのだ。

逆に言えば、この作品は彼女を追うことが前提の作りとなっており、見る側もそのつもりでいたほうが楽しめるだろう。もしかしたら、視線誘導されなかったところに、何か隠し要素やヒントがあるのかもしれないが、それは二度目の視聴にとっておいても良さそうだ。(なお、隠し要素などがあるのか知らずに書いていることをご承知おきいただきたい)

撮影上の制約が多く、発展途上の実写VR。和泉を演じた田中は「スタッフさんと試行錯誤しながら撮影しました」と語っており、ただVR技術を使うだけでなく、しっかりとドラマとして作って見せようという意欲を感じるものとなっている。ハコスコなど、スマートフォン用のVR視聴環境がある方は、一度視聴してみてはいかがだろうか。

PICK UP