香里奈の台詞で振り返る!『嫌われる勇気』“アドラー心理学” とは?

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香里奈演じる刑事・庵堂蘭子と、加藤シゲアキ演じる新人刑事・青山年雄を中心に、捜査一課の活躍が描かれるドラマ『嫌われる勇気』(フジテレビ系列、毎週木曜21:00~)。20世紀初頭に、オーストリアの心理学者、アルフレッド・アドラーが「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と提唱した「アドラー心理学」をテーマに描いた刑事物語がスタートした。

原案となった岸見一郎と古賀史健の著書『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)は、悩みを抱える青年と哲学者の対話によって、この心理学をわかりやすく解説している大ベストセラー。ドラマでは、刑事ミステリーとして大胆にアレンジされている。

ところで「このアドラー心理学とは何なのか?」。第1話では、有名モデル連続殺人事件の捜査をする蘭子の歯に衣着せない言葉や、相手の事を考えていないかのような行動に、新人の青山は翻弄される。そんな中、青山は上司に言われ、蘭子の事を“教え子”だと言う帝都大学文学部心理学科の教授・大文字哲人(椎名桔平)に会い、「アドラー心理学」について学ぶ事に。ここでは、物語を追いながら、蘭子と大文字教授の台詞を元に、アドラー心理学について紹介していく。

大文字教授は、アドラー心理学について「アドラー心理学は、個人心理という独自の心理学を確立し、“すべての悩みは対人関係の悩み”が根底にあると考えています。この世界から他者がいなくなれば、あらゆる悩みが消えてなくなる」と説明。それに対して青山は「それは極論です。他人なんて関係なく、自分一人で思い悩む事なんていくらでもあるじゃないですか?」と反論する。大文字は「ありますね」と認めながらも「悩むのは結構ですが、どんな悩みでも必ず他者の影がつきまとう」と語る。そして「この考えは犯罪心理にも関係すると考えている」と話し、さらに「いかなる犯罪者であれ、純粋に悪事を働こうと思って犯行に手を染める者などいません。犯罪者にとっての然るべき理由がある。彼らにとっての“善”です」と説く。

一方、蘭子は捜査の中で、2人の台頭によって地位を脅かされているモデルの天野真紀に近づくため、彼女がプロデュースする美容食品を扱う会合に潜入。そこで蘭子は、会員の主婦・鈴村が本心を隠しながら周りの調子に合わせ、本当は美味しいと思っていない商品を試飲しては「美味しい」と語り、欲しくもない高額な商品を購入する姿を目撃。そんな中、天野の言葉に何でも賛同する会合メンバーに対して、蘭子は「もし真紀先生が人間の糞や尿にも美肌効果があると言い、美糞や美尿などとしてプロデュースしたら、それでも有り難くいただくのでしょうか?」と語り、高額な洋服で身を固め褒めあう植村には「身の丈には合っていないように思えます」と思ったままをぶつけていく。その帰り道、蘭子に対して鈴村は「言いたい事をあんなに言えるなんて」と羨ましがり、蘭子は「私は言いたい事を言っているだけ。いつまで経っても変われないのは、自分自身が変わらないという決心をしているからです。日常生活に不満があっても、このままの自分が楽であり安心だ。そう思っている。あなたの不幸はあなた自身が選んだものです」と自身の考えを示す。

そんな中、捜査一課が犯人だと考えていた天野までも何者かに殺されてしまう。そこからも蘭子の独断行動は続き、青山は「(捜査一課の)みんな怒っていますよ。もう少し回りにも耳を傾けてください」と懇願。しかし蘭子は「私は、誰かのために生きているわけではないし、他人の目を気にするような不自由な生き方をしていません」と返答。苛立ちを見せる青山に「私は他人にも自分にも嘘をつきたくないだけです。嘘が大嫌いなんです」と断言し諦めさせる。

そして、捜査を続けるうちに、蘭子は犯人の目星をつける。一方、青山は大文字教授の下を訪れ「自分勝手なのかなと思っていたけど、違うのかも……」と相談。すると大文字教授は「他者から嫌われないように生きる事など、実はたやすい事です。自分を誤魔化し、妥協し、諦めれば良い。しかし、他者から嫌われてでも生きていこうとするのは実に難しい。自分に正直で、人の目を気にせず、決して嘘をつかない生き方など、1日も持たない人が殆どでしょう。しかし、アドラーはそれを実践する“勇気”が必要だと説いています。それは幸せになるための“勇気”でもある」と伝える。そして「彼女は私の“教え子”だと言いましたが、私は彼女に教えた事は一つもありません。彼女は、ナチュラルボーン(生まれついての)アドラーなんです」と語る。

クライマックスには、蘭子が犯罪を立証するために天野の会合へ。「あなた方はひたすら権威にしがみつく典型的なコバンザメですね。ここは掃き溜めです。中でも、ひときわ鼻につくのは、権威者である天野と自分とを結びつける事によって、特別である事を求め、偽りの優越感に浸っていたあなたです」と植村を名指し。「天野真紀はここ最近、落ち目のモデルに成り下がってしまいました。あなたは彼女に有名人のままでいて欲しかった。それで、出版社に脅迫文を送ったがそれを無視され、2人を殺した」と犯行を暴き、「しかし、疑いの目が天野に向いた事で、結局彼女の権威は失墜。そこであなたは、天野を悪者(高額商品を売りつけた悪徳商法)に仕立て、“そんな人を信じていた私”を押し通す事で、特別な存在であろうとした」と語り、「お望み通り、犯罪者という特別な存在になる事ができましたね」と断罪する。

アドラー心理学の“権化”とも言える蘭子のキャラクターが際立った第1話。殆ど表情を見せる事なく、他者の思いを隔絶した彼女の考え(=アドラー心理学)は、現状ではまだよくわからない部分も多い。今後、どのようにして物語は展開し、“幸せになるための勇気”を伝えていくのかに注目が集まる。

19日放送の第2話では、あるメーカーの執行役員の市川が、深夜に会社の窓から転落、死亡する。刑事の浦部(丸山智己)は自殺だと断定するが、蘭子はそれを否定。犯人は被害者と同じ会社にいる他殺だと推理する。さらに、同じ部屋で、1年前に同じ部の成美という若い女性が自殺していた事が判明。捜査を進める蘭子は、社員たちが“変わらない”という決断をしていると言う。まるで意味がわからない青山は、大文字教授を訪ね、その事を報告。すると大文字は、蘭子が意図するのは「目的論だろう」と話し始める。

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