小栗旬の“凄さ”って何? プロも驚がく「あまりにサラッとこなしてしまう」

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今年1月に公開され、興行収入45億円を越える大ヒットを記録した映画『信長協奏曲』のBlu-ray&DVDが、7月20日(水)にリリースされる。このほど松山博昭監督にインタビューを行い、小栗旬をはじめ、柴咲コウ、山田孝之ら俳優陣の魅力を語っていただいた。

歴史オンチの高校生・サブロー(小栗旬)が、突然、戦国時代にタイムスリップ。サブローがそこで出会った自分の顔とそっくりな本物の織田信長に、「自分と入れ替わって欲しい」と頼まれ、信長として天下統一を目指していく物語。

2014年に放送されたテレビシリーズでは、信長の妻・帰蝶(柴咲コウ)や家臣たちと絆を深めていく姿や、桶狭間、上洛、金ヶ崎、浅井朝倉との戦いが描かれ、映画では、その後に起こる本能寺の変などの様子が、映画ならではのスケールで紡がれていく。


<インタビュー>

――小栗さんは、主人公のサブローと、本物の織田信長(=明智光秀)という2役を演じられました。ズバリ、俳優・小栗旬の凄さって何ですか?

何が一番凄いかって、映画を見終わった後に、サブローと光秀を同じ人物が演じているのにまったく気にならないということです。両方とも小栗旬が演じているわけですが、2人の俳優がいるように見えるんですよね。それってとても難しくて凄いことなのに、あまりにサラッとやっているので凄いと感じさせない。これに尽きると思いますね。

――松山監督が、その凄さを感じた瞬間はどこですか?

キャスティング会議で、織田信長は小栗旬、豊臣秀吉は山田孝之、池田恒興は向井理、帰蝶は柴咲コウ。じゃあ、明智光秀はどうするとなった時に、そこでもう1回、“小栗旬”と言えたのは我々にとって幸運なことでした。実際にドラマ撮影が始まる前は、信長と光秀が同時にいる時のアップのシーンは、どちらかの肩越しに撮影する“なめる構図”にしないと気持ち悪くなると思っていたんです。でも、二人が初めて出会うシーンの撮影でそんな不安は吹き飛びました。小栗さんが完全に別人格を演じてくれて、そんな必要ないと気付かされました。

――小栗さん自身は、2役やることについて難しさを感じていたのでしょうか?

ドラマの時は、同日にサブローと光秀の役を撮影することが多々あったのですが、映画はスケジュールに少し余裕があり、同じシーンでも撮影自体を“サブローの日”と“光秀の日”と別けられたので良かったと思います。とはいえ何日か2役演じてもらう日があり、さすがにその日は少し繊細になっていたと思いますが、本人はそれを表にあまり出さないで、普通にこなしてしまう(笑) それで僕らもついつい「じゃあ、これもやって」「あれもやって」と要求を上げてしまう。今思えばもう少し配慮できれば良かったなと思います。

――帰蝶のツンデレっぷりもドラマからのみどころだと思います。

テレビドラマが始まった時の帰蝶は、かなりツンツンしたキャラクターでしたが、長いスパンの中で、彼女のサブローへの態度が柔らかくなっていきました。ツンデレのマックスからソフトに可愛くなっていく感じは、柴咲さんがうまくコントロールしてくれて、物語の最後では“結婚式を挙げたい”というところまで持っていってくれた。これは柴咲さんの力に寄るところが大きいと思っています。皆さんに「帰蝶が可愛い」と言われたのですが、それは柴咲さんの魅力ですね。

――小栗旬さんと山田孝之さんのお2人も大きな役割を果たしたそうですね。

クランクインして3日目くらいに、お寺の中で光秀と秀吉が会話するシーンの撮影がありました。その日の朝、2人に「ちょっと相談があるんです……」と言われて、撮影を3~4時間止めて話し合った結果、秀吉と光秀の関係性が元々の台本と大きく変わることになりました。

――どのように変わったのでしょうか?

本能寺の変が起きて、秀吉が光秀を殺しに来ますよね。当初の予定では、そこで秀吉が「俺はお前に村を焼かれて、お前に恨みを持っている。だから死ね」というシーンだったんです。しかし2人は「秀吉の恨みや怒りを強調するために、もっと早い段階でそれを言わせ、秀吉が光秀を動かしているようにしたい」と。それで秀吉が光秀に火傷の跡を見せるシーンは、殺す間際ではなく、早い段階に前倒し、それをわかった上で、光秀に本能寺の変を起こさせるという流れになりました。それによって緊張感が増して、光秀の追い込まれた感じや、秀吉の怨念の強さは強調されたと思います。

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