桐山漣「崩していくのが気持ち良い」落ちぶれた小説家役で新境地へ

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俳優の桐山漣が主演する連続ドラマ『傘をもたない蟻たちは』が、フジテレビ系で1月9日(土)23時40分よりスタートする。今回、桐山にインタビューを行い、物語の魅力や“殻を破った”という役への思い、原作者であり共演者でもある加藤シゲアキNEWS)の印象などをたっぷりと語っていただいた。

本作は、“生と性”をテーマに、ファンタジー、ラブストーリー、純文学など幅広いジャンルの物語が展開される加藤の短編小説集「傘をもたない蟻たちは」が原作。収録された6編の中から、「恋愛小説(仮)」、「インターセプト」、「にべもなく、よるべもなく」という全く異なる魅力を持つ3編を取り上げ、4週連続ドラマとしてそれらを再構成した。桐山は、ギリギリの生活をしている落ち目の若手小説家・橋本純を演じ、加藤は、ドラマのオリジナルキャラクターで、純と15年ぶりに再開する幼なじみ・村田啓介を演じる。

――主人公の純を演じてみて、手応えはいかがですか?

今回の作品は、僕が演じる純の妄想の部分など、とても振り幅の大きな役で、楽しいところは本当に楽しくて、僕のこれまでのイメージにないようなことをたくさんやらせて頂きました。僕自身、ひとつ殻を破れたのかなと思います。

――確かに、桐山さん自身も、これまで演じてきた役も“イケてる”イメージが強いですが、今回の純は“イケてない”ですよね(笑)

純は作家だけど恋愛にコンプレックスを持っていて、恋愛小説を上手く書くことができない。その憤りや葛藤が1話と2話でとてもよく出ていて、その中でこれまでとは違う姿を見せられていると思います。1話では、純が書いた小説「インターセプト」を映像化しているのですが、その小説の中の主人公・林も僕が演じています。そして、2話も小説として書いた物語が純の夢に出てくるという内容なのですが、どちらもアホっぽくて面白かったです(笑)

――1話では男女の心理戦がユーモラスに描かれていて、2話も妄想が膨らむシチュエーションですね。

1話の「インターセプト」では恋愛の攻防が描かれているのですが、林が安未果(足立梨花)という女性を口説き落とすための行動の一つ一つが“必殺技”にしか見えませんでした(笑)“こんな口説き方があるんだ……”って学ぶことも多かったです。例えば「お茶かコーヒーを飲んでいきませんか?」という二択を出すと、人は“帰る”という選択をしないというのがあり、これは男女問わず使っていける心理テクニックだと思いました。

――桐山さん自身が心理作戦を駆使することはありますか?

この作品でも出てきますが“ミラーリング”は有名ですよね。相手と同じ仕草をすることで心を開いてもらえるというテクニックです。僕らは撮影現場ごとにいろいろな方々とお会いしますが、最初からスムーズに話せる人もいればそうでない人もいます。そういったときに同じような体勢で話をすることはありますね。心理学みたいなものが好きな方も多いでしょうし、このドラマを見て“必殺技”の数々を使ってくれたら嬉しいですね(笑)

――2話は、純が小説に書いたことが“リアルな夢”になって出てくるというストーリーが展開されます。もし同じことが起こるとしたら、桐山さん自身は何か書きたいことがありますか?

僕は、中高生の頃はミュージシャンになりたくてバンドをやっていたので、ミュージシャンになった自分が東京ドームを満員に埋めている景色を見てみたいです。しかも、当時はベースを担当していたのですが、歌がすごく上手になったボーカル&ギターでフロントマンをやりたいですね(笑)

――現在はベースを弾くことはないのですか?

今は趣味の範囲でやっています。この仕事をしているとバンドを組んだりする機会もそうないですし、メンバーがいても時間を合わせるのが難しいですよね。ギタリストの役をやらせて頂くなど、音楽に関わることをこの仕事でもやらせて頂いていますが、実際にバンドを組むチャンスがあれば、貪欲に狙っていきたいです。

――そして3話からは純と啓介の中学生時代が重要になってきますが、印象的だったことはありますか?

原作の「にべもなく、よるべもなく」がベースで中学生時代の純と啓介、そして、当時の純の彼女・舞が登場します。大人の純が回想の中の彼らと芝居で絡むことはないのですが、4話で、大人の純と中学生時代の純と啓介が同じカットに出てくる海辺のシーンがあり、純の心情で親友だった頃の二人の姿を見ると胸の内が熱くなりました。

――1、2話はSFやファンタジー要素のが強かったですが、3、4話は中学生時代をベースに友情や恋愛模様が描かれています。この台本を読んで中学時代を思い出すことはありましたか?

ドラマでは、中学生の純が自宅謹慎になってしまうのですが、それまであまり会話をしたことのなかったクラスメイトの舞が、学校で配られたプリントなどを持ってきてくれるようになります。中学生の男子にとって、女の子がそうやって持ってきてくれるのって結構刺激的じゃないですか。そういうのを読んで中学生のときの恋愛を思い出しました。僕が中学生の頃はまだ携帯電話を持っている時代ではなくて、電話をかけるのは自宅だったんです。その子が最初から電話に出てくれたときの嬉しさ、お父さんが出ちゃったときのドキドキ感。この緊張感は、携帯を持って育った今の子どもたちには味わえないものですよね(笑) そうやってちょっとしたノスタルジーを感じられるのも、このドラマの良いところだと思います。

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