石丸幹二は“違いを見せる男”三谷幸喜『ギャラクシー街道』で新境地

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三谷幸喜が脚本・監督を務める映画『ギャラクシー街道』(10月24日公開)に出演する俳優・石丸幹二さんにインタビュー。新境地とも言える“小市民キャラクター”のムタ役への思いや、作品のみどころ、そして、これまで演じてきた役との“違い”を語っていただいた。

1990年から2007年にかけて劇団四季で活躍し、1996年にはネスカフェのテレビCM「上質を知る男」シリーズにも出演するなど、舞台俳優として確固たる地位を確立した石丸さん。劇団四季退団後も数々の舞台で活躍し、テレビドラマや映画などの映像作品でも大きな存在感を放っている。近年では、連続ドラマ『半沢直樹『(2013年)で演じた浅野匡の悪役ぶりで脚光を浴び、三谷幸喜作品では『オリエント急行殺人事件』(2015年)に出演。そのほか、歌手として活動しつつサックスも吹くなど、多彩な才能を見せている。

映画の舞台は、ノア(香取慎吾)とノエ(綾瀬はるか)が営む、宇宙に佇む小さなハンバーガーショップ“サンドサンドバーガー・コスモ店”。そこに集まった人々(全員宇宙人)によって物語は展開し、店にやってきたアース人・ムタを石丸さんが演じる。“ある目的”を持ち、わざわざ宇宙のハンバーガーショップにやってきたムタが、スペース客引き・ゼット(山本耕史)やスペースコールガール・イルマ(田村梨果)と、あるやりとりを進めていく。石丸さん曰く「ムタは地球では医師ではあるが小市民」。三谷演出によって作り出された魅力あふれるキャラクターを熱演し、三谷流スペース・ロマンチック・コメディに彩りを添えている。


<インタビュー>
――石丸さんにとっても“ムタ”は意外なキャラクターだったのではないですか?

今年初めにドラマ『オリエント急行殺人事件』に出演させていただきましたが、三谷さんの映画にははじめて参加させていただきます。『オリエント~』では、軍人役として硬めのキャラクターを作りましたが、今回はそれを思いっきり覆すことになるけど良いのかなと最初、ちょっと戸惑いました(笑)。しかし、石丸幹二という俳優を通して、三谷さんがいろいろなキャラクターの色を出してみたいと感じてムタという役を振ってくださったと思い、この船に乗ろうと決めました。これだけ振れ幅の大きな役が来るというのは、自分にとって意外ではありましたが、光栄です。

――これまでのファンの方々がムタを見たら驚かれるでしょうね。

女性に張り倒されたりするので、ファンの皆さんは驚かれるかもしれないですが、きっとそれも含めて喜んでもらえると思います。テレビドラマの『半沢直樹』で僕のことを知ってくださった方は“意地悪な人間”のイメージが強いかもしれないですが、今回演じるのは、医者という設定ではあるものの小市民で、すごく人間くさいことをするために宇宙までやってくる男です。そういう等身大の中年男の姿に共感していただければ、『半沢直樹』のイメージを良い意味で覆せるなと思っています。それで、石丸幹二って“実はいい人なのかも?”と思っていただけたらしめたものですよね(笑)。

――石丸さんが培ってきたイメージを考えると、勇気のいる出演だったのではありませんか?

これまで演じてきたキャラクターとは全く違うものの一つではありますが、コメディだからあり得るのかなと思いました。はじめて……いわゆるラブシーンをカメラの前でやったのですが、台本でも気になっていたので「これ、どういう風に撮るんですか?」と聞いたら、三谷さんに「触れあうんですけどね、あっという間に終わりますよ」と言われて(笑)。正直、そのシーンの撮影が終わっても「これで終わり?」と拍子抜けした部分もあるのですが、それこそがこのコメディ作品のツボなんですよね(笑)。

――あのシーンのムタと石丸さんの感情はシンクロしていたのですね。

そうなんです(笑)。三谷さんが、撮影するまでこのシーンの種を明かしてくれなかったので面白かったです。現場でシーンの内容を伝えられて「じゃあ、こうしよう」といった感じに撮影していました。田村さんとは事前に稽古して、彼女自身もキャラクターをいろいろ変えて試していたのですが、現場に行ってみたら、絵に描いたようなコールガールになっていた。おかげで新鮮な気持ちで現場に臨むことができました。

――以前、「ヒーローではなく等身大のキャラクターを演じるのが楽しい」と仰っていたのを拝見したのですが、今回の役についてどのように感じましたか?

そういう意味でも演じていて楽しかったです。弱みをさらけ出すというのは面白いんですよ。例えば、歴史上の偉人たちは良いところしか見せないじゃないですか。そうではない、人間くささや、泥臭いシーンを見せるのは自分にとっても新しいチャレンジでした。ムタは、器が小さくてケチですが、ある意味、チャーミングな人物。長所も短所も出てくるキャラクターで、もしかしたら自分でもこういう役を探していたのかもしれないですね(笑)。

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