斎藤工&石田ゆり子の恋愛をセットで表現、デザイナーが語るドラマの裏側

公開:

大学病院を舞台に、医者たちの恋愛模様や様々な悩みを描いたドラマ『医師たちの恋愛事情』(フジテレビ系列、毎週木曜22:00~)の撮影セットツアーがこのほどフジテレビ湾岸スタジオにて開催。ツアーの案内を終えたデザイナーの鈴木賢太さんが取材に応じてくれた。

このドラマは、医療現場をモチーフにしながら、恋愛を主軸に置いた“医療ラブストーリー”。斎藤工演じる患者思いで正義感の強い医師・守田春樹が、石田ゆり子演じる仕事に没頭するあまり婚期を逃した先輩医師・近藤千鶴に出会い惹かれていく様子が描かれている。

今回、鈴木さんには恋愛と医療という2つの軸を映像化するにあたり、何を考え、どのようにしてセットをデザインしたのか、ドラマ制作現場の裏側を語っていただいた。


<インタビュー>

――今回のセットのテーマとポイントを教えてください。

今回の制作チームは、今まで医療ドラマで携わってきた人たちではなく、恋愛ドラマを一緒に作ってきた人たちなんです。僕はこれまでに医療ドラマでは「医龍」「コード・ブルー」、「ラストホープ」に携わってきましたが、そのときは“医療が主軸にあって、格好良く見せる”というコンセプトの元でやってきました。しかし、今回は恋愛ドラマで一緒だった制作チームからお話が来たので、はじめはピンクの病院を作らなくちゃいけないのかなって(笑)。でも、内容を聞いたらしっかりした病院に見えるようにしたいと。そして、突き詰めていくと真面目に医療に向き合う姿に惚れていく姿を描いた作品だったので、医局が一番大きなパートとなりました。ここでは、二人が恋愛関係になったときの奥の背景を素敵に見せるために奥行きをキープして、遠くの景色や奥の闇の感じを作れるように心がけました。

――鈴木さんにとって良いセットとは、どのようなものですか?

「病院だ」と言ってもらえることがやっぱり一番嬉しいです。「すごく格好良い」とかになってしまうとちょっと違うじゃないですか。ただ、その素敵すぎないという加減が難しくて、今回に関しては、素材も面白いし、画的にも美しいし、こんな病院があったら良いなという最高のものを一回考えたうえで、あえて引き算をしています。

――撮影に適したスペースとアングルを作るのも大変なのでは?

そうですね。良い映像を撮ることも大事ですが、撮影スピードも大事ということになります。我々はマルチ撮りと言っていますが、医局では複数のカメラでまとめて1回で撮ってしまう方法を使うことになったんです。ただ、そうするとカメラが動ける広いスペースが必要になってくる。そのために色々な場所を10センチとか20センチずつ削り出して、広い空間を作っていきました。そうすることで、この窓から覗いてピントを合わせて、どれくらいボケていくとファンタジーな感じになるのかなど、各セクションが「恋愛」を念頭に置きながらやっています。

――表現が難しかったのは何ですか?

廊下と医局の部分ですね。色々な大学病院を見学させていただいたのですが、医局って普通の部屋なんですよ。でも、このドラマでは殆ど医局内で恋愛ドラマがあると言われたので、素敵な映像が撮れて、さらに普通の部屋というリアリティを追求しなくてはいけませんでした。そこで、撮影したときに片方から撮ると抜けの外の景色を感じ、逆から撮ると白い壁を感じるとか、どの角度から撮っても印象が変わるようにと心がけました。それと、二人が接触するのが、背中合わせで椅子に座っている状態とソファーと小テーブルのところ、廊下などがあるのですが、このセットの中でいろんなバリエーションの二人きりのシーンを作るために細やかなところまで考えています。

――スタジオセットで2階部分を作るのも珍しいですよね?

最後まで「本当に必要?」って聞いていました(笑)。当然面積が増えるし、人が2階に上がるわけですから、耐久性を考えると鉄骨を入れなくてはいけません。手術室からは見上げるアングルになるので天井も作らなくてはならない。そうなると大道具的にはかなり大規模なセットになるんです。医療ドラマであればその術技やオペシーンをずっと撮っていることになるのですが、今回はシーンとしてはさらっと見せて、手術の様子がまるで愛の儀式のように見せたい。ただ、手技が速いのではなくて、セクシーに見えたりとか,過剰に触ったりとか、そういうのを見せていく中で必要だということで作りました。

―― 一般の方を招いたスタジオツアーが行われましたがいかがでしたか?

新鮮でした。建てたばかりのセットで、これで正しかったのかなと試行錯誤しながら撮影しているものがオンエアされて、それをご覧いただいた人たちがセットにいるのが衝撃的で、案内していてもワクワクしました。一部の方に「ここは次回予告で座っていた椅子ですよね?」と言われて、細かいところまで見ている方は見ているなと感じましたし、やはり好きな役者さんがお芝居をしていた場所で衣裳にも袖を通せて、というのは、本当に楽しいのだなという印象を受けました。視聴者の方々の顔を直に見られたのはとても大事なことで、これから先も作品をしっかり作ろうと改めて思いました。

PICK UP