【インタビュー】脚本家・古沢良太が映画「エイプリルフールズ」執筆を振り返る

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フジテレビの人気ドラマシリーズ「リーガルハイ」の監督・石川淳一&脚本家・古沢良太コンビが手掛ける愛と感動の爆笑エンターテインメント超大作『エイプリルフールズ』が4月1日より全国公開される。このほど、脚本を手掛けた古沢がインタビューに応じてくれた。

本作は、戸田恵梨香演じる対人恐怖症の妊婦や松坂桃李演じるSEX依存症の天才外科医など、総勢27名もの超豪華俳優陣が演じる個性的なキャラクターたちが、“エイプリルフール”についた小さな噓によって生まれた7つのエピソードを紡いでいく群像劇。古沢には、『エイプリルフールズ』誕生の経緯や、魅力的なキャラクターを描く上で心がけていること、そして脚本家として目指している姿などを語っていただいた。


<インタビュー>

――気心の知れた「リーガルハイ」スタッフとの制作となりましたが、どのような経緯でこの企画がスタートしたのでしょうか?

実は、最初テーマも決まっていないところから始まったんです。いろいろなアイデアが出てくる中で、以前から考えていた「エイプリルフールの1日の中で起こる群像劇」というアイデアを提案したところ、皆さんからもアイデアがたくさん出てきて、この企画に決まりました。アイデアをすごく出してくれる人たちなのでとても助かっています。

―― どうして“エイプリルフール=噓”をテーマにしようと思ったのでしょうか?

そもそも“嘘”って、映画のモチーフとして昔から使われているように、とても面白いものですよね。たくさんの登場人物が大きな噓をつくわけじゃないけれど、小さな噓をついていくうちに影響しあって、小さな奇跡を起こす。そのモチーフがすごく面白いと思っていました。

――本作を執筆する上で苦労したことはありますか?

きっと苦労はあったんでしょうけど、苦労は本当に忘れますね(笑)。いつも脚本を書くときに思うのですが、僕が面白いと思っているだけで、見てくれる人たちは面白いと思わないんじゃないかと。そういう部分が気になりますよね。

――魅力的なキャラクターが数多く登場しますが、人物像を作り上げていく上でいつも心がけていることはありますか?

僕が書くときに挑戦しているのは、こんな人は到底好きになれないというような人でも、見終わった後には好きになってもらえるようにするということです。そこには自信を持っていますし、同時にやり甲斐を感じています。

――役者さんのことを考えながら人物像を作り上げるのでしょうか?

もちろん俳優さんに楽しく演じてもらいたいし、その役を好きになってもらいたい。そして、この役を演じたいと思ってもらいたい。でも、一番大事なのは自分の中にある人物像を描いていくことですね。もちろん、キャストが決まっているときは、その人のイメージを想定して書くことになりますけど、今回はキャストが決まっていなかったので、自分の中にある人物像を膨らませていきました。戸田さんと松坂さんという優秀な俳優さんが演じてくださったので、お客さんにもこのキャラクターを好きになってもらえると思いました。

――「対人恐怖症の妊婦」や「SEX依存症の天才外科医」、「命懸けの接客係」「魔性のキャビンアテンダント」「不器用な誘拐犯」「ワケあり小学生」など、さまざまな人物が登場します。このキャラクターたちによって現代社会の抱える問題などにも触れられていたと思いますが、脚本を執筆する上で、今の社会で起きていることを取り入れるようにしているのですか?

今作る意味があるというか、現在というものをそこに織り込んだり表現したりすることは絶対に必要なことで、そうじゃないと面白い作品ができそうだとワクワクしないんです。それと同時に映画の場合は普遍的ということが大切だと思っていて、その両方が良いバランスでテーマとして捉えられたとき、良い映画になると思います。

――これまで、多くのジャンルのドラマや映画を執筆されてきましたが書きたいテーマは常にいくつもあるのでしょうか?

僕はあらゆるジャンルのあらゆるタイプの作品を書きたいと思っているのですが、今はそんな技術はないから、書けるものと書けないものがあります。でも、仕事を続けていくうちに、以前は書けないと思っていたものが、今の自分になら書けるかもしれないと思えるようになってくる。そうやって新たなものに挑戦していっています。

――古沢さんにとって、目標やゴールのようなものはありますか?

究極的には、ものすごく面白くて、歴史に名を残すようなとんでもない作品を作りたいんです。毎回、これはそうなるかもしれないという気持ちで始まるのですが、意外とならないなって(笑)。でも、少しずつ目指せるものが高くなっていると実感しているから続けていける。やっぱりできると思えないことは目指せないじゃないですか。できるかもしれないと思えて初めて目指そうとするんですよね。結果的に手は届かないかもしれないけど、とてつもなく高いところを目指せると思えるように、日々、更新していくということだと思います。

――そんな中、さまざまなメディアで“人気脚本家=古沢良太”と言われていると思いますが、それに関して感じることはありますか?

僕はいつも部屋にこもって書いているだけなので何も変わらないですよ。「人気脚本家と言われてる」と聞かされても、「それ噓でしょ?」って今も思っています(笑)。でも、この前、ずっと通っている歯医者さんが僕のファンだということを知って通いづらくなりました。僕のことなんか知らないと思って治療を受けていたら、すごいコアに知っていて驚きました(笑)

――最後に、古沢さんは完成した映画「エイプリルフールズ」をご覧になっていかが思われましたか?

石川監督の個性だと思うのですが、僕が想像していたよりもエッジの効いた作品になっていて、泣けるところは予想していたよりも泣けたし、いろいろな凹凸のある個性的な作品になっていて面白かったです。ぜひ、ご覧ください。


<古沢良太プロフィール>
ドラマ『相棒シリーズ』や映画『ALWAYS三丁目の夕日』シリーズ、映画『寄生獣PART1&2』、映画・舞台『キサラギ』、ドラマ『リーガルハイ』シリーズなど、さまざまなジャンルで才能を発揮している脚本家。本作は『キサラギ』以来となるオリジナル脚本の劇場作品。

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