家出少女・柚奈(星乃夢奈)の監禁事件が、ヒナコ(武田玲奈)の謎めいた過去との接点に?コミカルに始まり終盤はサスペンスホラーに着地する巧みな仕掛けも圧巻! 『あなたの恋人、強奪します。』(第4話)

公開: 更新: ABCマガジン

100万円の強奪依頼からスタートした第4話は、家出少女・柚奈(星乃夢奈)と“泊め男”白石(篠田諒)との奇妙な共同生活、そしてヒナコ(武田玲奈)が追う過去の事件という3つのストーリーが別軸で展開しながら徐々に交錯していく。脚本と演出の妙が隋所に冴えわたった30分だった。

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「彼氏を奪って、私を振るように仕向けてほしい」と依頼をしてきた雪緒(日比美思)。100万円の高額依頼だが、ヒナコは出し抜けに梨沙(渡邉美穂)を“泥棒猫”に指名し、新人割引だからと1万円で雪緒の依頼を引き受ける。初めて“強奪役”の命を受けた梨沙は、ターゲットである雪緒の彼氏・成瀬(遠藤健慎)に接近するが、“男を落とすさま”がまったく板についておらず、描かれていくのはただただ梨沙の“愛嬌”。DV彼氏を華麗に強奪してくれたヒナコに憧れ「女を磨きたい」と誓ってCATの一員になった梨沙だが、実は他人に愛嬌は振りまくものの、不器用で純朴で噓のつけないまっすぐな女性であるキャラクターが見えてくる。

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梨沙に強奪を任せたヒナコは、表向きは「休日」を装いながら、4年前の連続女性連れ去り事件を目撃したとされる謎のポエム売りの男(栗原類)を見つけ出していた。事件の手掛かりを躍起になって捜しており、4年前に失踪したある女性が関わっているようだ。陽介(渡邊圭祐)に対しても秘密を貫いていることから、ヒナコの人生に大きくかかわる人物のよう。

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これまでベールに包まれてきたヒナコの過去が、何らかの伏線であることがじわじわと伝わってくるこのシーン。趣のある花街の一角でヒナコとポエムを売る謎の男と意味深なやり取りをするシーンはわずかな時間だったが、栗原のミステリアスな存在感がこのワンシーンを掌握。強烈な印象を残していた。

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そして、4話のラストシーンで新たな強奪依頼者となるのが、家出少女・柚奈。父の再婚と新しい母の妊娠で家に居場所がなくなったと感じていた柚奈と、妹を事故で亡くしてから家族がバラバラになってしまったという“泊め男”の白石。第4話前半の点描では、広い豪邸に一人で暮らす白石の寂しさに寄り添い、その優しさに心をゆだねていく柚奈。

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やがて柚奈は自身が「監禁されているのでは…?」という疑問にさいなまれていく。自分のスマホは取り上げられ、窓を開ければ警報が鳴り響く…。この第4話は最終盤に演出は急転し、ヒッチコックばりのサスペンスホラーへと潜り込んでいく。

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白石は家出少女を救う善人か、それとも少女を監禁する卑劣な悪人なのか――? 

だがしかし、ひりつくようなラストシーンにはまだ続きがある。ヒナコがオフィスへと戻り、強奪に失敗した梨沙がうなだれていたそのとき、柚奈からの電話がCATに鳴り響く。電話口の緊迫した柚奈の声は、ヒナコの“過去の記憶”を呼び覚ます…という波乱含みの展開に!

ヒナコ(武田玲奈)の謎めいた過去への伏線が張り巡らされ、終盤はサスペンスホラーへ…。脚本と演出の巧みな仕掛けが練りこまれた『あなたの恋人、強奪します。』は、TVer・ABEMAで無料見逃し配信中。

<文・ニノマエヒビキ>