
カンヌ、ヴェネチアほか海外映画祭で高い評価を受け、世界が認める巨匠、黒沢清監督が、自身のキャリアで初めて真っ向から挑む親と子のドラマは、現代日本の家族を映し出した意欲作。混沌として、閉塞感が漂う時代。本作で描かれる平凡な4人家族の日常は、ニッポンや世界の状況とも無縁じゃない。リストラ、失業、就職難、学校の問題、そして戦争……彼らは、外部の大きな力に翻弄されながら生きている。黒沢監督は、そんな現実を鋭く映し出す一方で、若者のアメリカ軍入隊など映画だからこそ描けるシニカルな寓話的要素もストーリーに織り込んでいく。そして、「ある種の希望にたどり着きたかった」と監督が語るエンディングでは、家族にささやかな幸せが訪れ一筋の光が注ぎ込む。それは、このニッポンで生きる私たちがきっと共有できる希望。『トウキョウソナタ』が放つ光は、映画館から出た後も消えることなく、あなたの上にやさしく降り注ぐことだろう。