ド迫力で水槽に飛び込んでくる白クマ。空中を悠々とお散歩するオランウータン。雪玉で遊ぶゾウ。そしてヨチヨチと可愛らしい行進を見せたかと思えば、高速で頭上を飛び回るペンギン!
動物たちの生活ぶりを自然界にいる状態に近い形で展示する「行動展示」が話題を呼び、いまや日本だけでなく海外からも観光客が訪れる北海道旭川市の旭山動物園。幾度も閉園の危機にさらされながら、動物園のスタッフたちはどうやって夢のような展示を実現するに至ったのか?その過程を新人飼育係の視点から描き出した、奇跡の実話。
物語の核を担うのは、人づきあいが苦手な新人飼育係と、彼の成長を温かい目で見守る懐の深い園長。個性豊かな飼育係たちに教育され、時に反発しながら、人間として成長していく新人飼育係。経験値にとらわれない彼の発想が、ベテラン飼育係にも刺激を与えていく。閑散とした動物園が紆余曲折を経て生まれ変わるまでの過程を、一人の若者の成長譚とリンクさせた脚本が秀逸だ。
監督は「寝ずの番」「次郎長三国志」で高い評価を受けたマキノ雅彦。ご存じ、俳優の津川雅彦による映画監督第3作目だ。アクの強いキャラクターによる群像劇を撮るのが得意な監督が本領発揮。行動展示そのものをドキュメンタリータッチで描くのではなく、監督が焦点を当てたのは行動展示実現のために奔走する動物園のスタッフたちの右往左往ぶり。個性的な飼育係たち、そして動物たちを丁寧に、ユーモア感たっぷりに描写することで、夢を追い求める男たちのアツい物語を、ほっこりとした絶妙な後味を残す作品に仕上げている。
飼育係を演じた俳優陣も実に豪華。園長役の西田敏行はじめ、柄本明、岸部一徳、長門裕之、六平直政、笹野高史、平泉成...。一人だけでも十分存在感のあるキャスト陣が大集合。動物相手の撮影は彼らのキャリアをもってしても思いがけない落とし穴が多々あったそうだが、それすら楽しんでいる様子が作品から伝わってくる。また、そんな役者陣を相手に堂々渡り合う、中村靖日(「運命じゃない人」)と前田愛(「バトル・ロワイアル」)の演技が、一服の清涼剤的なアクセントに。
そして何よりも素晴らしいのは、実力派の俳優陣に負けない動物たちの生き生きとした演技。CGを使えば理想的な動物の動きや表情を作るのは簡単だが、今作では基本的にCGは封印。それどころか動物プロダクションのプロの動物も使わず、「動物園にいる動物」の撮影にこだわったのだそう。そのため旭山動物園はもちろんのこと、全国の動物園で撮影を敢行。スタッフは繊細な動物を刺激しないために細心の注意を払い、2年間に渡って動物たちに密着した。その甲斐あって、ゾウの雪合戦のシーンや、2頭のチンパンジーの触れ合いのシーンなど...監督もビックリの自然な演技が奇跡的に実現している。
ただ観ているだけで、動物園に実際に行った気分になれる映像が満載。自由に動き回る動物たちの姿と、その動物に振り回される男たちの姿は、癒し効果満点だ。旭山動物園に行ったことのある人はもちろん、まだ未体験の人も、そして、このゴールデンウィーク、どこにも旅行に行けない!というアナタ!旭山動物園の動物たちに会いに行ってみませんか?
金曜ロードショー『旭山動物園物語~ペンギンが空をとぶ~』
4月30日(金)21:00~22:54(日本テレビ系)
テレビドガッチが